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2026/09/17 20:33

こんにちは、金永です。

9月19日、20日、21日の3日間、
「金永レザー展」を開催します。

今回レザーをまとめてご紹介するにあたって、
以前から気になっていたことがありました。

お手入れについてです。


クリームを塗った方がいい。
オイルを入れた方がいい。
触らないほうがいい。

ネットで調べてみると、
情報は無限に出てきます。

もちろん参考にはなるのですが、
古着の革を実際に見たときに、

「じゃあ、これには何をしたらいいのか?」

という判断は、
なかなか自分ではつきません。

そこで今回は、実際に革を扱っている方に、
「自分でできること」と「プロに任せること」
を聞いてまいりました。



今回お話を聞かせてもらったのは、
大阪・玉造にある古着屋「THE END」さま。

廃棄される日本鹿の革に、生きた証としての傷跡ごと価値を見出すレザージャケットブランド「ARCANA」を展開しながら、ヴィンテージの革ジャンも扱うお店です。

革のリペアも手がける、まさに革のプロ。

現在リペアは一旦休止中とのことですが、
年内には再開見込みだそうです。

ARCANA (アルカナ) 様 Instagram
古着屋 The End 様 Instagram
website

普段から様々な革を扱い、
実際に傷んだ革を見て、触って、
どうするかを判断されています。

今回、私が聞きたかったのは、

「自分でできることは、どこまでなのか。」

そして、

「どこから先は、プロに相談したほうがいいのか。」

この2つです。



まず、自分でできること。

結論から言うと、
自分でできることは、そこまで難しくありません。

革のお手入れというと、
クリームを塗ったり、オイルを入れたり
なんとなく難しそうなイメージがあります。

ちゃんと、シンプルです。

むしろ今回お話を聞いて、
ブラッシングや陰干しのような、
もっとシンプルなことが、
もう少し浸透してもいいんじゃないかと思いました。


まずはブラッシング。
汚れがあれば、固く絞った布で軽く拭く。

ブラッシングは、
表面のホコリなどを落とすだけではなく、
革の状態を見るきっかけにもなります。

着終わったあとに軽くブラシをかける。
それだけでも、十分大切なケアだそうです。

クリームを使う場合も、
いきなりたっぷり塗るのではなく、
まずは目立たないところで少量を試す。

問題がなければ、薄く伸ばしていく。
基本は、このくらいシンプルに考えていいのです。


この、「まず少量で試す」という一手間、
実はちゃんと理由がありました。

同じ「本革」でも、
染料でじっくり染め込まれている革と、
表面に顔料(車の塗装のような膜)がのっている革とでは、
クリームの浸透のしかたがまったく違うそうです。

染め込まれている革はクリームがすっと入っていく一方、
顔料でコーティングされている革は、
表面に膜が張られているような状態なので、
クリームがあまり浸透せず、表面に留まりやすい。

正直、これを見た目だけで判断するのは、
プロでも一概には言えないそうです。
私も、まだまだそこまでの目は持てていません。



だからこそ、
「まず目立たないところで少量試す」
という一手間が大事になる。

これは面倒な確認作業ではなく、
その革がどちらのタイプなのかを、
自分の手で確かめる作業でもあるんですね。

そして、着終わったあとは風通しの良い場所で陰干し。

保管するときも、ぎゅうぎゅうに詰め込まず、
できるだけ風が通る状態にしておく。

これは、湿気をこもらせないためです。

革にとって湿気は、カビなどの原因になります。

そして、毎回クリームを塗る必要もありません。


私自身、革のケアについてYouTubeなどを見ていると、
話の早い段階でクリームが登場する印象がありました。

例えば駅の修理屋さんの店頭でも、
クリームなど目に付くことが多い。

「革のケア=クリーム」
というのが基本なのかなと思っていましたが、
ケアの頻度も、シーズンオンとシーズンオフの際
目安として年1〜2回程度。

このくらいでいいとのこと。


とは言え、クリームは何を使うのか。

ここは私自身、かなり迷っていたところです。

YouTubeを見ても、Amazonを見ても、
おすすめされているものが違う。

「一応自分でも良いと思えたものを使っているが、
結局、何を使えばいいんだ?」

というのが正直なところでした。

今回お話を伺った中で名前が出たのが、
ラナパーとサフィールです。


もちろん、
「これが正解」という話ではありません。

ただ、実際に革を扱い、状態を見て、
ケアやリペアまでしている方から紹介されると、
やはり説得力があります。

特にラナパーについては、
いろいろな革に使いやすいものとして教えていただきました。

そのあたりは好みも分かれるので、
むしろゴリゴリのヴィンテージを育てていくような人には、
こういうものも面白いのかもしれません。

そして
ラナパーを実際に使うときの塗り方もお見せ頂きました。



面白かったのが、
「手で塗る方法 」

少量を手に取り、
革の状態を感じながら薄く伸ばしていく。

手で触ることで、
革の硬さや乾き具合、
クリームの入り方を直接感じられる。
状態を確認しながら量を調整できる
こんな意味があります。

もちろん、スポンジなどで塗っても問題ありません。

ただ、手で触りながらやってみると、
革の状態を自分で知るきっかけになる。

単に「手で塗るとかっちょいい」という話ではない
今回実際に教えてもらって面白かったところです。


サフィールについても、
革用の製品がいろいろあります。

今回お話を聞いていて、
金永で扱うようなレザーアイテムや、
私のお客様には、比較的扱いやすく、
仕上がりを見ながら使えるものが向いていそうだと感じました。

念のためご説明ですが、
スウェードは別物です。

スウェードにはスウェード用のケアがあります。

ブラッシングをして、
必要に応じて専用スプレーを使い、陰干し。
ムートンなども同じです。

革だから全部同じ、ではない。

今回お話を聞いて、
まず覚えておきたいのは、
そこなのかもしれません。

それでも、プロに任せたほうがいいことがあります。



私の私物
コルビジェジャケット

1970年代のユーロレザー
私が見つけた時点ですでにこの状態でした。

ヴィンテージらしい雰囲気はかなりありますが、
元をたどれば、ただのワークウェア。

長い間、お手入れをされることなく着られてきたのではないか、という状態でした。

ボタンも、もう留めることができません。

表面はかなり傷んでいて、
ところどころ革本来の表情が大きく崩れています。

ここで出てきたのが、
「銀面 (ぎんめん) 」という話でした。

革の一番外側にある「銀面」という層
革の中でもっとも強度を支えている部分

この銀面が擦れて失われてしまうと、
その下の層が出てきます。

そこにクリームを入れたからといって、
失われた銀面が元に戻るわけではありません。


もちろん、見た目を整えることはできます。

傷んだ部分を切り取って別の革を接ぎ足す
「切り替え」という直し方もあるそうですが、
色味を完全に一致させるのは基本的に難しく、
「直す」というより「新しいデザインとして再構成する」
に近い提案になるとのこと。

また、破れやひび割れを自分で接着剤で補修してしまうと、
あとでプロに頼んだときにかえって直しにくくなる、
という話も印象的でした。

迷ったらまず相談するのが一番です。



では、この革ジャンはどうするのか。

実際にこの状態を見てもらったところ、
「これは切り返すしかない」とのことでした。

ボロボロになっている部分を切り取って、
別の革を接ぎ込む。

色味を完全に馴染ませることはできないので、
その切り替え自体をデザインとして見せる方向で作り直す。

「元の状態に戻す」のではなく、
「ここから先、また長く着られる一着に作り変える」
という提案でした。

つまり、
「延命していく。」

それもヴィンテージとしての付き合い方のひとつです。

クリームや補色で見た目を整えながら、
これ以上大きく傷ませないように使っていく。

ただし、もう傷みが進んでいる部分は、
少しずつ終わりに向かっている革でもある。

だからこそ、
まだ元気なうちから普段のケアをしておくことが大事なのだと思います。


そして、もうひとつ大事なのが、
自分で何とかしようとしすぎないこと。

接着剤を使ったり、強く擦ったり。

一度自分で手を入れてしまうと、
あとからプロが修理するときに、
かえって難しくなる場合があります。

革の状態が分からないうちは、
まず触りすぎない。

「これ、どうしたらいいんだろう?」

と思った時点で、
一度プロに見てもらう。

これも革との付き合い方なのだと思います。

ただしバッグは、少し事情が違いました。



今回のレザー展では、
革ジャンだけでなくバッグもいくつか出します。

その中で、正直ちょっと気になった話がありました。

バッグの内張り(布の裏地)が、
時間が経つとベロっと剥がれてくることがある、
という話です。

これは「加水分解」という、
接着剤や芯材が水分と反応して起こる、化学的な劣化です。

一度始まると、
一部を直しても、
他の場所も同じように崩れていく。

防ぎようのない部分が大きい、とのことでした。

裏地を張らず革一枚で作られているシンプルな作りのバッグは、
そもそも分解する素材が少ない分、長持ちしやすい。

一方、今回金永で出すバッグは、
内張りのあるタイプがほとんどです。

見た目のきれいさや、使いやすさのために、
裏地や芯材を使うこと自体は悪いことではありません。

ただ、それがいずれ劣化していく可能性がある
だからこそ今回のバッグは
状態を一点一点じっくり確認しながら、
慎重に仕入れさせていただきました。



では、内張りのあるバッグとは、
どう付き合っていけばいいのか。

完全に防ぐ方法はない、というのが正直なところですが、
進行を遅らせることはできるそうです。

風通しの良い、湿度の変化が少ない場所で保管すること。
ビニール袋などで密閉せず、たまに空気に触れさせてあげること。

これは革ジャンの保管と同じ考え方でした。

そしてもし、内張りにベタつきや粉のような剥がれを見つけたら、
それは加水分解が始まっているサインかもしれません。

その場合は、無理に触らず、
中を開けて劣化した部分を取り除き、作り直すしかないとのことでした。

早めに気づいてあげることが、
一番のケアなのかもしれません。



昔の革のほうが、良いのか。

今回、革の話をしている中で、
昔と今の革についても少し教えていただきました。

「昔の革のほうが良い」

という話は、ヴィンテージを扱っているとよく出てきます。

でも、実際にはそんなに単純な話ではありませんでした。

例えば、原皮の値段、なめしの工賃、裁断や縫製の人件費。
このあたりは、この数十年でどれも上がっています。

同じ販売価格を維持しようとすると、
そのしわ寄せは原価、つまり革そのものの質に来やすい。

昔10万円で買えていた革が、
今の物価であれば15万、20万円になっていてもおかしくない。

でも実際は、同じくらいの価格帯で売られている。

だとしたら、
「昔の革のほうが良かった」と感じるのは、
ある意味自然なことなのかもしれません。

もうひとつ、
なめしの工場自体が、
日本から海外に移っていった、
という背景もあるそうです。

技術は伝えられていても、
その土地で何十年もかけて積み上げてきた全ての蓄積までは、数年では埋まらない。

これも、質感の違いにつながっている可能性がある、とのことでした。


ただし、悪い話ばかりでもありません。

クローム鞣しとタンニン鞣し、
両方の良いところを合わせた
「コンビネーションなめし」のような、
昔にはなかった技術も生まれています。

逆に、白なめしのような伝統的な手法は、
今はコストがかかりすぎて、
商品として成立させるのが難しいそうです。

注) 
なめし=動物の生皮を、腐らずしなやかな「革」に変える加工のこと。クローム鞣しはクロム塩を使う、現在主流の速いなめし方。タンニン鞣しは植物由来のタンニンでじっくり仕上げる、経年変化が魅力のなめし方。白なめしは菜種油などでじっくり仕上げる日本古来の手法。

だから、
昔だから良い、
今だから悪い、
という単純な話ではない。

原皮の値段、なめしの工場、時代ごとの技術。
いろいろな条件が積み重なって、目の前の革に至ります。

このあたりを知っておくと、
ヴィンテージの革を見るときも、
少し違った見方ができて面白いのではないでしょうか?



今回話を聞かせてもらったのは、
大阪・玉造にある古着屋「THE END」さま。

廃棄される日本鹿の革に、生きた証としての傷跡ごと価値を見出す「ARCANA」を展開しながら、ヴィンテージの革ジャンを扱い、革のリペアも手がけています。

革の種類、仕上げ、状態。
そして、これからどう付き合っていきたいのか。

それを見ながら、
何をするかを決める。

そんな考え方でした。

今後はケア用品についても相談させてもらったり、
リペアが再開した際には、金永のお客様にもご紹介できるような関係になればと思っています。

この度は、本当にありがとうございます。
また機会を改めて、お礼のご挨拶に伺います。


9月19日、20日、21日。

この3日間、金永のレザーをまとめてご紹介します。

牛革、スウェード、ゴートなど。
定番ものから、なかなか見ないヴィンテージまで、
いろいろな革が揃いました。

せっかくなので今回は、
ご購入後のケアの話も交えながら
皆様と一緒に革選びができればと思っています。

皆様のご来店とWEBストアのアクセス、
心からお待ちしております。

金永
店主 金場大作